ジャズレパートリー (Jazz Repertoire)
ジャズレパートリーの学習における重要な意義の一つは、演奏できる曲目を増やすことによって、ジャムセッションやギグなどの実際の演奏の場に自信を持って臨めるようになる点にあります。
スイング、ボサノバ、バラード、ブルースなど、さまざまなスタイルの楽曲を偏りなく学ぶことで、各スタイルに特有の演奏法を身につけることができます。
また、即興演奏やコンピングを個別の練習項目としてではなく、実際の音楽の流れの中で運用する力が育っていきます。一曲一曲の中には、コード進行、フォーム、スタイル、リズム、演奏の組み立て方が含まれており、それらを実際の音楽の流れの中で理解しながらジャズの語法と音楽的判断を実践の中で身につけ、演奏の場で使える力へと結びつけていくことが演奏力の形成につながります。
当スクールでは、ジャズレパートリーを学ぶ意義を、主に次の三点から整理しています。
ジャズレパートリー曲目リスト
ジャムセッションやギグに対応する
ジャズでは、多くの演奏が共通のレパートリーを前提として行われます。そのため、ジャムセッションやライブ演奏において、スタンダード曲を知っていることは大きな意味を持ちます。演奏できる曲が増えるほど、初対面の演奏者との共演に入りやすくなり、その場で求められる曲に対応できる範囲が広がっていきます。
レパートリーを増やすことは、ジャムセッションへの参加、ライブ演奏への対応、他のミュージシャンとの共演へと直結します。単に曲名やメロディを知っているだけではなく、実際に演奏できる状態まで身につけておくことで、現場に対する心理的なハードルが下がり、演奏の場に自信を持って臨めるようになります。言い換えれば、レパートリーは練習課題であるだけでなく、実際の演奏の場へ入っていくための土台です。
ジャズ演奏の構造を理解する
スタンダード曲には、コード進行 (Harmony)、フォーム (Form)、スタイル (Style)、リズム (Rhythm) といった、ジャズの基本的な音楽構造が含まれています。これらを実際の曲の中で学ぶことで、ジャズ演奏の構造を実践的に理解することができます。理論を知識として覚えるだけで終わらせず、曲の流れの中で体験しながら理解することで、それが演奏上の判断へと結びついていきます。
さらに、一曲の中で何がどの順序で起こっているかを把握することによって、演奏全体の見通しが立つようになります。どこで緊張が高まり、どこで解決し、どのようなスタイル感で表現すべきかを曲の中で理解していくことは、即興演奏やコンピングの内容を判断する土台となります。レパートリーを通して学ぶ意義は、理論項目を個別に覚えることではなく、それらが実際の音楽の中でどのように機能しているかを捉える点にあります。
リードシートを読む力を培う
ジャズでは、楽譜は通常、リードシート (Lead Sheet) の形で書かれています。リードシートにはメロディとコードシンボルが記されており、伴奏、ボイシング、演奏全体の構成は、演奏者自身の判断に委ねられます。そのため、レパートリー学習は、単に曲を覚える作業ではなく、限られた情報から音楽全体を構成していく力を培う訓練でもあります。
コードシンボルから実際の和音を導く力、コード進行からハーモニーの流れを理解する力、さらにリードシートをサイトリーディングする力は、いずれもレパートリー学習の中で育っていきます。ジャズレパートリーの学習において大切なのは、譜面をなぞることではなく、リードシートを手がかりとして音楽を組み立てる力を身につけることです。その力が育つことで、初めて扱う曲に対しても、構造を読み取りながら演奏へ結びつけることができるようになります。

初級者レパートリー (Beginner)
初級では、ジャズスタンダードに触れながら、基本的なコード進行、フォーム、スタイルを整理して学びます。スイング、ボサノバ、バラード、ブルース、モーダルといった主要なスタイルを幅広く経験し、各曲の構造を理解しながら、演奏の土台を築いていきます。
スタンダード (Standards)
Autumn Leaves (枯葉)、Blue Bossa (ブルー・ボッサ)、Satin Doll (サテン・ドール)、Fly Me to the Moon (フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン)、All of Me (オール・オブ・ミー)、Take the A Train (A列車で行こう)、A Foggy Day (ア・フォギー・デイ)、Day by Day (デイ・バイ・デイ)、But Not for Me (バット・ノット・フォー・ミー)、I’ll Close My Eyes (アイル・クローズ・マイ・アイズ)
ブルース (Blues)
Bag’s Groove (バグズ・グルーヴ)、C Jam Blues (シー・ジャム・ブルース)、Freddie the Freeloader (フレディ・ザ・フリーローダー)、Blue Monk (ブルー・モンク)
バラード (Ballads)
The Nearness of You (ニアネス・オブ・ユー)、Misty (ミスティ)、My Romance (マイ・ロマンス)
ボサノバ・ラテン (Bossa Nova / Latin)
Girl from Ipanema (イパネマの娘)、Corcovado (コルコヴァード)、Dindi (ジンジ)
モーダル (Modal)
So What (ソー・ホワット)、Cantaloupe Island (カンタロープ・アイランド)、All Blues (オール・ブルース)、Little Sunflower (リトル・サンフラワー)
ビバップ (Bebop)
Solar (ソーラー)、Round Midnight (ラウンド・ミッドナイト)
リズムチェンジ (Rhythm Changes)
Oleo (オレオ)、Rhythm-a-Ning (リズム・ア・ニング)
中級者レパートリー (Intermediate)
中級では、より複雑なハーモニーやフォームを持つ楽曲へ 進み、スタイルごとの差異や語法を、演奏の流れの中で理解していきます。テンポ、曲想、構成の幅が広がる中で、リードシートから音楽を組み立てる力を深め、即興演奏とコンピングを実践的に結びつけていきます。
スタンダード (Standards)
Four (フォー)、There Is No Greater Love (ゼア・イズ・ノー・グレーター・ラヴ)、There Will Never Be Another You (アナザー・ユー)、Out of Nowhere (アウト・オブ・ノーウェア)、Star Eyes (スター・アイズ)、All the Things You Are (オール・ザ・シングス・ユー・アー)、On Green Dolphin Street (オン・グリーン・ドルフィン・ストリート)、Just Friends (ジャスト・フレンズ)、Someday My Prince Will Come (いつか王子様が)
ブルース (Blues)
Straight, No Chaser (ストレート・ノー・チェイサー)、Blue Train (ブルー・トレイン)、Tenor Madness (テナー・マッドネス)
バラード (Ballads)
I Remember Clifford (アイ・リメンバー・クリフォード)、In a Sentimental Mood (イン・ア・センチメンタル・ムード)、But Beautiful (バット・ビューティフル)、My Funny Valentine (マイ・ファニー・ヴァレンタイン)
ボサノバ・ラテン (Bossa Nova / Latin)
Desafinado (デサフィナード)、How Insensitive (ハウ・インセンシティヴ)、Wave (ウェイヴ)
モーダル (Modal)
Maiden Voyage (メイデ ン・ヴォヤージュ)、Milestones (マイルストーンズ)、Footprints (フットプリンツ)、Blue in Green (ブルー・イン・グリーン)
ビバップ (Bebop)
Groovin’ High (グルーヴィン・ハイ)、Night in Tunisia (ナイト・イン・チュニジア)
リズムチェンジ (Rhythm Changes)
Dexterity (デクスタリティ)、Moose the Mooche (ムース・ザ・ムーチ)
上級者レパートリー (Advanced)
上級では、ビバップ、Rhythm Changes、複雑なコード進行、現代的な語法を含む楽曲を扱い、高度な演奏判断を養っていきます。高速テンポへの対応、クロマティックなラ イン、即応的なコンピング、深いフォーム理解を通して、実際の現場で自在に機能するジャズ演奏力を磨いていきます。
スタンダード (Standards)
Stella by Starlight (ステラ・バイ・スターライト)、Alone Together (アローン・トゥゲザー)、The Night Has a Thousand Eyes (ザ・ナイト・ハズ・ア・サウザンド・アイズ)、Giant Steps (ジャイアント・ステップス)、Moment’s Notice (モーメンツ・ノーティス)、Stablemates (ステイブルメイツ)、Dolphin Dance (ドルフィン・ダンス)、Recorda Me (レコーダ・ミー)、Airegin (エアジン)
ブルース (Blues)
Billie’s Bounce (ビリーズ・バウンス)、Mr. P.C. (ミスター・ピー・シー)、Stolen Moments (ストールン・モーメンツ)
バラード (Ballads)
Round Midnight (ラウンド・ミッドナイト)、Naima (ナイーマ)、Body and Soul (ボディ・アンド・ソウル)
ボサノバ・ラテン (Bossa Nova / Latin)
One Note Samba (ワン・ノート・サンバ)、Triste (トリステ)、Aqua de Beber (アクア・ジ・ベベール)
モーダル (Modal)
Impressions (インプレッションズ)、Nefertiti (ネフェルティティ)、Joshua (ジョシュア)、E.S.P. (イー・エス・ピー)、Witch Hunt (ウィッチ・ハント)
ビバップ (Bebop)
Confirmation (コンファメーション)、Cherokee (チェロキー)、Donna Lee (ドナ・リー)、Ornithology (オーニソロジー)
リズムチェンジ (Rhythm Changes)
Anthropology (アンソロポロジー)、Salt Peanuts (ソルト・ピーナッツ)、Eternal Triangle (エターナル・ト ライアングル)